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ネットワーク通信長崎12月号第287号より

木須博行    

ネットワーク通信長崎12月号寄稿:2021-12-04

加筆訂正:2021-12-28

現況のまとめ 長崎大学のBSL4施設は21年7月31日に建設業者から長崎大学へ引き渡された。その後試運転を経て,来年度にも本格稼働が予定されている。これまで我々が目指して来た『建設差止』は裁判の決着を待たず無意味となった。しかしこのままBSL4施設の稼働を黙って見ているわけにはいかない。あの住宅街に建つ武蔵村山のBSL4施設でさえ移転を余儀なくされ,移転先の条件として住宅地との間に緩衝地帯が必要とされている。とにかく,住宅地と隣接した場所で致死的病原体のゲノム編集を含む動物実験を行うなど正気の沙汰ではない。何としても当地でのBSL4研究を断念してもらわねばならない。

新たな訴訟の計画 という次第で,新たに『稼働差止』の訴訟を現在準備中である(建設差止は取下げ)。念のため言えば,完工の日程は予めわかっていたとはいえ,建設途上の建物に対して『稼働差止』などは訴訟の対象にならない。『稼働差止』出番はこれからなのである

 これに加えて,BSL4施設として稼働するには厚労大臣の認可が必要であることに着目し,厚労大臣に対してその認可を差止める訴訟を提起する。請求原因は,住宅密集地でBSL4研究を行うことの安全性が立証されていないことである。 

新原告と裁判費用の公募 我々はこれらの訴訟にあたり,近隣住民に新たに原告への参加を呼びかけた。すると多くの賛同が集まり,総勢55名の大原告団となった。裁判の原告となるには非常な覚悟を要したはずで,近隣住民の危機感がいかに強いかがわかる。 

 さらにもう一つの決断がある。裁判では著名な学者の証言が必要と予想され,そのため裁判費用がかさむことが見込まれた。そこで,CALL4と呼ばれるクラウドファンディングを利用して全国から寄付を募ることとしたのである。末尾の案内を参照してほしい。

他の訴訟の進行状況 現在我々が抱える訴訟は情報開示請求2件と計画中止要求の合計3件であるが,紙幅もないのでここでは被告の不誠実な姿勢の一例を示すに止める。

 一般にバイオ実験中には実験キャビネット内に病原体エアロゾルが発生する。よってエアロゾルをキャビネット内から出さないよう,キャビネット内を陰圧に維持することが実験者の安全を守るために必要不可欠となる。かくして,陰圧を維持するために大量のキャビネット内のエアロゾル空気を実験施設外に吸い出す必要が生じるのである。

 長崎大学のBSL4施設からの総排気量については,被告の説明によると毎時2万7千立米である。これは一日で200m四方の住宅地が高さ16mの排気の海に沈んでしまうほどの量である。しかも実験期間中の安定した排気のために,何か月も昼夜連続で放出される。ところがこの量でさえ例えば武田薬品のBSL3施設と比べてもはるかに少ないのである。そこでその確認のため資料の開示を求めた,排気量は黒塗りで隠されていた。WHOはBSL4施設の排気は人のいる建物から離れて放出するよう求めている。排気に病原体が混じっている恐れが完全には排除できないからである。そういうものの放出量をまさかごまかすとは思わないが,ならばなぜ黒塗りなのか。このような被告の姿勢からは安全・安心を住民と共有する意志など微塵も持ち合わせていないことがよくわかるのである。

寄付のご案内 寄付公募の詳細は本誌11月号に同封されたチラシのほか,次でもご覧いただけるhttps://bsl4731.exblog.jp/241267446/)。ご支援をお願いします。





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# by nakamatachi3 | 2021-12-29 13:22 | Comments(0)