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 バイオ事故の実例収集については,実例は方々にあるものの,丹念に記録していくことが疎かになっていました。また集積を再開します。

12.バイオ関連事故例12:あのSARSは実験室内感染から広がった(2016-04/10 New!)

 私たちの記憶にもまだはっきりと残っていると思いますが,SARSの大流行で,私たちは震え上がりました。記録を見ると2003年~2004年にかけてのことでした。
 これがなんと実験室感染だったのです,という衝撃の事実をつぶやき集の記念すべき第一号としてつぶやいたのでした。この事件を改めて,この事故例に加えておきます。このエビデンス(証拠書類)はWHOの2006年版マニュアルです。これには感染研翻訳の日本語版国立感染研翻訳の日本語版もあります。

 これらのマニュアルには,冒頭序文で『2003~2004年のシンガポール、台北、北京における実験室内SARS-CoV感染が経済にもたらした影響や科学的関心は・・・』
と書かれており,
 『関係する科学界や国の規制当局による見直しをも促進したという点が重要である。』
と続いています。2006年のこのWHO指針はこのSARSの実験室内感染事故を受けて,これまでの欠点をさらに改善する方向でまとめられたものと言えます。
 つぶやき集ではここまでの紹介にとどめておきました。

 ここではこの事件について別の観点を指摘しておきます。この事件から汲み取るべき教訓とは,

 『マニュアルとか指針とかには,このような大きな事故や事件が起こった後,ようやく対策が盛り込まれていく』

という点です。2003年~2004年のSARSの事件にはこうして対策が取られましたが,この反省の重点は人間対策だと思われます。なぜなら,このSARS事件の原因は研究者自身に問題があったからです。

 では,2006年の指針で,ヒューマンファクターに関する対策が強化されたとして,果たしてこれで完全になったのでしょうか?とてもそうとは思えません。さらに想定内,想定外の事件・事故が起きないとは誰にも言えないのです。日本語マニュアルの4ページ,緒言の部分に,下記の記述があります。

 実験施設バイオセキュリティに関しては、未解決の問題がまだ数多く残されている。また、一般の人々、科学者、実験室管理者、行政担当者、国家当局、および国際社会に対し、感染性物質の保有および取扱いに伴うバイオリスクを予防、管理、制御、最小化するための適切な方策が執られていると安心させるためには、まだ多くのことを実施する必要がある。本文書で述べているバイオリスクマネジメント手法は、バイオセーフティと実験施設バイオセキュリティを包括するもので、上記の疑問を解明するためのステップを示すものである

 要するに実験室バイオセキュリティも未だ試行錯誤の段階というべきなのです。もし坂本キャンパスにBSL4施設が設置されるとしたら,坂本キャンパスではエボラの動物実験ばかりではなく,BSL4施設運営に関しての壮大な試行錯誤の実験が行われることになるでしょう。

 事故や事件のリスクを限りなくゼロにできると豪語する片峰学長は,よほど優れたお人なんでしょう。しかし,片峰学長が去られた後の人間は普通の人間である可能性が高いのです。そういう人の責任までどうやって保証できるのですか?

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========記事はここまで=======

by nakamatachi3 | 2016-04-10 23:16 | ・根拠資料集 | Comments(0)

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