2000年5月の第147国会において,当時社民党の辻元清美議員からバイオ施設の安全性に関する質問が出されました。ここではその質問の主意書と当時の森首相の答弁(国の見解)を見ておきます。下記の質問番号14です。
 ・第147回国会 質問の一覧
 基本的にBSL4施設のみでなくバイオ施設全般の安全性についての質問ですが,それらは当時全く不備であったことがわかります。その不備な情況は現在もなお同じなのです。


1.バイオ施設の立地に関する国会質問と答弁New

質問は12項目に及びますが,ここでは最も重要な5番目について記録しておきます。

五 WHO『Safety in Health-care Laboratories』(1997年 和訳『保健関係施設の安全性』)では「高度封じ込め実験施設あるいは危険な実験施設は、患者や公衆のいる地域とよく使われる道路から離れて立地されなければならない。」(P.16)とし、バイオ施設の立地について規制している。日本でもこれに従い住宅地及び公衆の集まる地域に立地することを禁ずる法的な規制が必要と考えるが、いかがか。


②当時の森首相の答弁が以下です。

五について お尋ねの「Safety in health - care laboratories」は、世界保健機関の公式文書ではなく、内容についてはその著者が責任を持つとされていると承知している。また、同文書の十六ページにおいては、高度封じ込め実験検査室あるいは感染リスクの高い実験検査室は、患者のいる場所や公共部分あるいは人の行き来の多い通路から離れて設置すべきである旨が記載されているが、これは、病院等の施設内においてどこに実験検査室を配置するかを論じているものであり、実験検査室が住宅地及び公衆の集まる地域に立地することの是非を論じているものではないと承知している。 なお、都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第八条第一項第一号に規定する用途地域内の建築物については、建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)により、その用途に応じてその建築が制限されている。


③この答弁の問題点
森首相の答弁に示された見解は1.WHO97年文書から(その1)で指摘したように意図的な『誤訳』が潜んでいます。
すなわち,重要な個所はこの和訳が現れる文章そのものではなく,その直前にある"Residential areas" を含む文章なのです。その語句を意図的に無視することにより実験検査室が住宅地及び公衆の集まる地域に立地することの是非を論じているものではないという解釈に到達できるのです。
それから下線部については97年文書の重みを減らそうとする意図が感じられます。確かにそのような文言はありますが,多かれ少なかれWHOの文書は署名入りで,例えば2004年版にも内容の責任は著者のみにあることが明言されています。この件については長崎大学はもう主張していないようですが,それもそのはず,97年文書も各WHO文書で正式に引用されているのです。

なお,これに関するより詳細な議論は,WHOの立地勧告に関する文書の検証(その2)をご覧ください。
(2015-03-29)


他の質問項目についても考えます。



A.議論の所在に戻る
B.長崎大学の主張の骨子に戻る
C.WHOの原典文書類に戻る
トップページに戻る











=======記事はここまで=======

[PR]

# by nakamatachi3 | 2015-03-29 14:59 | ・根拠資料集 | Comments(0)