1.WHO97年文書から(その1)

①まず最も重要な論点から議論します。その箇所は以下にあります。
文書: Safety in Health-care Laboratories (1997年)C.WHOの原典文書類に掲げた第3番の文献。)
章: 3. Laboratory premise (第3章.実験施設:敷地と建物)
節: Location of the laboratory (ラボラトリーの位置)(第3章の4番目の節)


②私たちが最も重要と考える文章は,この節の8行目にある次の文章です。

―wherever possible laboratories should be sited away from patient, residential and public areas, although patients may have to attend and provide or deliver specimens;

③この文章の和訳として,私たちは長島功さんの訳(『保健関係実験施設の安全性』にあります)を全面的に支持します(その根拠は後述)。それを踏まえて,私たちの訳をここに示します。

ーたとえ患者が訪れて標本を提供したり届けたりしなければならないことがあるとしても,ラボラトリーは患者のいる地域や住宅地,公共の地域から可能な限り離れて建てなければならない。

すなわち,住宅地や公共の地域から可能な限り離れてとあります。私たちはこのことがあるので,BSL4施設が住宅地に建てられることはWHOの勧告に違反すると主張しているのです。ましてや坂本地区は単なる住宅地ではなく住宅密集地であり,建設はもってのほかと言わざるを得ません。


④それでは長崎大学や以前国会で答弁した国はどのように訳しているのでしょうか?実はここに示したような訳に対する形で公表されたものは見つけることができていません『保健関係実験施設の安全性』には,『国はこの英文に含まれている"residential areas"をなぜ省いて解釈するのか』という抗議の一文があります。

つまり,国は上記②の文章を無視することで『ラボラトリーは住宅地からできる限り離れて建てること』というWHO勧告を誤訳しているわけです。これは意図的でなければできないことです。長崎大学はこの国のやり方をそのまま無批判に引き継いでいますので,WHOの勧告に違反しているという批判を免れることはできないのです。そう言われたくなければ,長崎大学はこの文章を独自に訳出してください。


⑤ただし,WHO文書では『できる限り離れて建てること』としか書かれておらず,どの程度離れていればいいのか数字的に示されていません。こういうことこそ,国が法律を整備して定めなければならないことです。

声明 項目別まとめに書いた通り,法的整備はほとんどなされていません。従って,そのような現状では長崎大学のBSL4施設設置計画はいったん白紙撤回すべきなのです。
(2015-03-22追加)


⑥ではなぜWHOはこのような勧告を出したのか,考えてみましょう。同じく『保健関係実験施設の安全性』の1.3節には,P3実験室の環境・立地条件についてが書かれています。ただし,その考察の原典"Laboratory biosafety manual (Second Edition)"(1993)は今ではインターネットで入手できないようです。しかし,その修正版であるLaboratory biosafety manual Third Edition (2004年)にも同じような文章がありますので,そちらで考えます。

21ページの項目8の4行目から次のように書かれています。

When exhaust air from the laboratory (other than from biological safety cabinets) is discharged to the outside of the building, it must be dispersed away from occupied buildings and air intakes.

和訳:実験室からの排気(生物学的安全キャビネットからの排気以外)を建物の外部に排出する時は,人のいる建物と空気取入れ口から遠く離れて拡散させなければならない。

すなわち,実験室のある建物からの排気は人のいる建物 (occupied buildings)から遠く離れたところに排出しなければならないのです。この『人のいる建物』が研究所内の建物であるか一般の住宅であるかは明言されていません。しかしながら,どちらであっても事情は同じです。
もし研究所内の建物を指すとすれば,一般住宅からはより一層離れるべきことは明らかだからです。BSL4施設はこのような潜在的な危険性を持っているために,97年版には立地勧告がなされたものと考えられます。(実は,ここの文章はBSL3の施設について書かれている部分です。BSL3施設であってさえこのような配慮が必要なのです。現在,坂本地区ではBSL3施設が稼働していますが,正当性を再検証すべきではないのかと思われます。)
(2015-03-23追加)


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=======記事はここまで=======

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# by nakamatachi3 | 2015-03-21 11:48 | Comments(0)