長崎大学が進めるBSL4施設設置計画の白紙撤回を求める声明


 長崎大学は最高度に危険な病原体の実験研究施設を坂本キャンパス内に設置しようと計画しています。私たちはこの計画を慎重に検討してきました。その結果、この計画は長崎市民にとって無用かつ危険なものであるとの結論に達しました。ここにその根拠を掲げて計画の白紙撤回を求めます

1.この施設はエボラ患者に何の助けにもならないこと
 この施設は動物実験が行われる実験研究施設であって、医療施設ではありません。長崎大学はエボラ出血熱の脅威に便乗して、施設があれば長崎市民は安全・安心と宣伝してきました。しかし、医療施設ではないのですから市内にエボラ患者が出現しても何の役にも立ちません。
 むしろ、生きたエボラウイルスが市内に存在することになり、長崎市民にとってはそこから感染が広がる危険と恐怖の源になってしまいます。

2.この計画は安全神話にすがった計画であること
 長崎大学は絶対に安全な施設を作ると言ってきました。しかし、いくら安全な施設を作っても重大事故防止には万全ではないのです。なぜなら、重大事故の多くはヒューマンエラーに起因すると言われているからです。これは人間の営みにおいて避けることが困難な統計的真実です。そして想定外のことは必ず起きると覚悟しなければなりません。安全神話の失敗を私たちは福島の事故で学んだばかりです。
 それから、排気自体も本質的に危険を孕んでおり、実験施設内への排出は施設内の人間の安全を損なう恐れがあります。このため、WHOの指針では実験室からの排気は直接建物の外部に排出すること、従ってBSL4施設は住宅地から離れていることを要請しています。このことからも、住宅密集地である坂本キャンパスに設置することは非常識ということがわかります。

3.万一の時は一大学では対処できないこと
 万一の事故が起こった時の補償について、長崎大学は通常の施設と同様な補償を行うとしています。しかし、感染が広範囲に広がるような不幸な事態になった時には、一大学・一学長が補償できるものではありません。深刻な事態になるかどうかは本当に紙一重の運の差に過ぎないのです。謙虚な姿勢が大学側には全く見られません。このような安易な姿勢は施設ができた後の運営にも反映されるでしょう。

4.国の法的整備が全くなされていないこと
 そもそもこのような人類全体に及ぶ重大な問題は、国が万全の責任を持って対処すべきことです。ところが、BSL4施設に関する安全基準、設置基準、環境評価基準、さらには補償の考え方などがまったく決められていないのです。原発でさえ原子力規制委員会で安全審査をする仕組みができています。最高度に危険な病原体に関する研究でも、このようなシステムが必要なのです。一大学が今計画することは非常におこがましいと言わざるを得ません。長崎大学の計画は少なくともそれらが整備されたあとになされるべきものです。

 私たちが長崎大学によるBSL4施設設置計画の白紙撤回を求める理由は以上の通りです。以上の意見に対する長崎大学の反論を私たちはいつでも歓迎し、議論を尽くすつもりです。

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by nakamatachi3 | 2015-01-23 22:56 | ・声明文 | Comments(0)

検討項目大学の主張等主な反対理由
A:安全神話を前提にしている a. 施設は絶対大丈夫なように作る ①事故の多くはヒューマンエラー。これは統計的事実であり,施設が仮に完全でも事故は起こり得る。そういう謙虚な姿勢が見られないのは危険。
②フィルターは完全ではなく排気中に少数のウイルスが混じることは避けられない。
③万一の想定外が生じるかもしれないことは福島原発事故で学んだはず。
b. 排気中にウイルスが少数含まれてもエボラは空気感染しないし,ウイルスはすぐ死ぬ①研究対象はエボラに限らない。空気感染するウイルスの場合もあるはず。
②エボラウイルスについても本当のことはまだよくわかっていないはず。
③研究していない危険ウイルスが脅威となった場合,施設は無いのと同じ。
④ウイルスの種類により,ごく少数でも危険な場合がある。
⑤排気は本質的に危険を孕んでおり,実験施設内への排出は施設内の人間の安全を損なう恐れがある。WHOの指針では実験室からの排気は直接建物の外部に排出すること,従ってBSL4施設は住宅地から離れていることとなっている
c. BSL4施設では事故は起こっていない実際には世界で事故は起こっている。(資料参照) 正しい情報を伝えない大学の姿勢は不信感を増す。福島でも事故の隠ぺいで被害を拡大させたことが明らかになった。
d. 停電や自然災害,地震に備えるために,国と相談して決めていく①国が定めた安全基準に沿って,国の規制委員会で審査すべき。
②国は未だ法律として安全基準や環境評価基準を策定していない。
③相談や指導のような単なる国の関与ではなく,法整備を求める
B:市民の安全安心は得られるのか
(むしろ危険と不安を増大させるもの)
a. 長崎は外国人も多く来る。施設があれば,エボラ患者が突然出現しても市民は安心 ①BSL-4施設は実験研究施設であって医療施設ではなく,エボラ患者の治療には役に立たない。高度医療施設の充実こそ必要。
②施設の利用者はウイルスの研究者であって医師ではない人が多くを占める。
③エボラ患者の急な出現を想定するなら,検疫体制・拡大防止体制の強化こそ必要。
b. ウイルス検査に外国まで送る必要がある①実際にはエボラの疑いも国内の検査ですぐに晴れた。ずっと昔のことを持ち出して市民を脅したのかと疑わざるを得ない。
c. 施設があればいろいろ薬品を試せる患者にとってはすでに遅すぎる。有効な薬品がそんなに早く見つかるなら今でもすぐできるはず。
d. 高度医療施設がすぐそばにあるから便利病院のすぐ横に動物実験研究施設があることこそ非常識
②高度医療施設とBSL4施設をペアで設置するとなると,BSL4施設は高度医療施設の数だけ必要となるが,そういう理念はないし,危険すぎる。
③エボラ患者にとっては実験研究施設では手遅れで役に立たない。
④研究者が感染に気が付かないこともある(ニューヨークの医師は,帰国後も感染に気付かず,地下鉄に乗ったりした)。
C:計画は研究最優先の発想 a. 施設は長崎大学の名誉であり,発展できる
b. 研究に後れを取る
c. 共同研究したらアイデアを盗られる
①市民の安全を損なうものであれば,市民は迷惑。
②武蔵村山の施設は市民の名誉とはならず不安をもたらしている。
③研究最優先の発想。研究上の競争のために設置したいということが露見している。
④兇悪ウイルスと人類との戦いは研究者個人の戦いの段階を超えている。人類への貢献という広い観点を持ってほしい。そういう人間でないと逆に研究者として危険
d. 研究者の往来が活発になり,長崎市の経済発展にも寄与できる①万一の事故が起こった時は,福島のように大きなマイナスとなる。
②研究者の数は少数で,研究者の往来で市の経済発展を期待するなど笑止の沙汰。
③長崎大学に作る目的は国際的共同利用志向ではなく,研究者の往来は多くないはず。市民の安全を損なうものであれば本末転倒
e. 都市部にあれば試薬品も入手しやすく便利①研究者の都合で坂本設置を計画したのかと疑われる発想。
②施設のリスクを多少でも市民に負わせるという意識が見られない。
D:一地方大学で処理できない問題を含んでいる a. 補償は通常の他の施設や設備と同様に対処する ①安全神話で補償問題を軽く考えている。万一広範囲に広がった場合,一大学で対処できないことは自明。安易な姿勢はやめて欲しい。
②万一の事故が深刻な事態になるかどうかは時の運。謙虚な姿勢が全くない。
③感染はあっという間に広がり,国際的問題となる恐れもある。
b. これから国と相談しながら施設を具体化していく①安全基準と安全審査に関して国の法律がない。原発関係でさえ,原子力規制委員会があって,審査する体制となっている。バイオ研究にもそれが必要。
一機関が国と相談して決めるのではなく,法律に基づき国の組織によって審査されるべき。少なくともその体制ができるまでは計画を中止して欲しい
③バイオ研究は法律の下で,最終的に国が責任を負う体制とすべき(BSL1~4まで,それぞれ必要)。
c. 有識者会議を作って進めていく①大学が恣意的に選んだ有識者会議では何の意味もない。国の組織による規制委員会のようなものが必要。
E:建設場所について
(アフリカ現地に建設することを望む)
a. 坂本地区に建設する WHO指針(1997年,2004年)を尊重し,住宅地は避けるべき。場所選定の経緯も不明。
②感染者が多くいる現地に建設すべき。世界で四十数カ所も施設があるが,アフリカ現地には二カ所しかない。
③世界中が協力し合うシステムが構築されていない。その構築に貢献すべき。これまでそのシステムがなかったのは,世界各国ともエボラなどの撲滅よりは生物兵器とその防御に関する研究に重点があったからと考えている。
④日本と長崎大学は国際協力をリードしていって欲しい。世界に尊敬される。国境なき医師団もその必要性を訴えている。
⑤ウイルスの変異とその対策の研究は,国内では動物実験しかできないので不十分。現地には不幸な感染者がおられるので研究には最適なはず。
b. ウイルスが国内で変異した時に備えて国内にも施設が必要①日本で発病した後の研究では遅い。アフリカ現地で予め変異に備えよ。
②人に感染した後の変異について,普段の研究は現地でないとできない。
③国内での動物実験の際にウイルスが強くなっていく不安の方が大きい。
F:学長の姿勢について
(計画は学内教職員の賛同を得ていない)
a. 学内の反対声明賛同者に匿名が多く,信用できない ①この計画は学内教職員の賛同を得ていない。学内の公開質問等にまともに向き合って来なかった学長の責任は大きい。真摯に議論を尽くそうとする姿勢がまったくない。
②匿名にせざるを得ない学内の運営こそ批判されるべき。
反対意見を軽視する態度は極めて不遜であり,学内での上意下達・独断専行の運営体質を露呈している。学長は学内の賛同を得るという姿勢を元々持っていない。
b. 議会の議決を以って住民の賛成を得たことにしたい(請願,陳情)この大学の姿勢は言語道断。住民の賛同を軽視している姿勢が露呈している。学内教職員に対する姿勢と同根である。
②議会に対する姿勢で『長崎大学の発展のためにBSL4は大変有益』という考えの押し付けが見られるが,それが市民の安全と引き換えでは本末転倒も甚だしい。
G:情報公開による安全の担保 a. 常に情報公開で,不安の無いよう運営していく ①研究の本質上,情報公開で安全を担保することは恐らくできず,市民は安心できない。理由はたとえば以下の例が考えられる。
②遺伝子組換えの内容や研究テーマ自体が知的財産の一部を構成することがあり,情報公開しない理由とされる恐れがある
③危険なウイルスはテロリストの標的となり易く,特定秘密保護法(4)テロ活動の防止のためという理由で情報公開がなされない恐れもある。
H:議会と行政への要望 a. 長崎大学の発展が市民の安全・安心を犠牲にしたものであってはならない。慎重に確認をお願いする。 ①長崎大学の信念と住民の意思が相反する場合,住民の意思を尊重して欲しい
②大学の言い分を鵜呑みにしないで,市民にとっての安全を慎重に見極める責任を感じて欲しい。
③長崎県議会文教厚生委員会は請願採決の約1時間後に設置推進の意見書を提出したが,判断には十分な時間だったのか?

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by nakamatachi3 | 2015-01-23 16:55 | ・長崎大学の主張への批判 | Comments(0)



当ブログで議論する際の客観資料として用いるものです。必要に応じ,随時追加します。

 ・根拠資料1:ヒューマンエラー 2015-12/10 更新!
  化血研で引き起こされた不祥事は,ヒューマンエラーの別の型が表面化したものです。いくらマニュアルや監視システムを万全にしても想定外のニューマンファクターが存在するのです。
 ・根拠資料2:バイオ関連事故例 2015-02/12
 ・根拠資料3:WHOの原典文書類 2015-03/19
 ・根拠資料4:バイオ施設の安全性に関する国会答弁 2015-03/29
 ・根拠資料5:感染症法をマスターしましょう 2016-02/02 New!
 ・根拠資料6:感染症法と関連する厚生労働省令 2016-02/07 New!


立地条件に関するWHO勧告を巡る議論に飛ぶ
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by nakamatachi3 | 2015-01-19 18:05 | ・根拠資料集 | Comments(0)

 片峰学長はバイオ研究に伴う事故を軽視した発言を続けていますが、実際には事故が世界中で起こっています。これに対してこういいます。『事故があったとしてもその施設はBSL4施設ではない』。BSL4施設はもっと安全に運営されるとでも言いたいのでしょうか?
 しかし、BSL2やBSL3で生じるヒューマンエラーがBSL4施設では生じないということがあるでしょうか?確率は小さくなるかもしれませんが,ヒューマンエラーというものはいくら施設が万全でも起こり得ることです。そして、BSL4施設で一度でも起こってしまうと、福島のような取り返しのつかないことになる恐れがあるのです。そこにはほんの紙一重の運の差しかありません。
 ただし、バイオ研究に限りませんが、事故は隠蔽されやすく、バイオテロの標的となりやすいバイオ研究については特にその心配があります。しかしそれでも以下のような大きな事故が報告されています。
 これら以外にも、書物『バイオテロ』(朝日新聞社,2002年発行,ジュディスミラー他著)には,それまでの多くの事故・事件が記録されています。
 私たちは今後とも調査を続け、事故例を掘り起こしてここに追加していくことにします。なお,事故の報道に接した方はぜひお知らせください。 

12.実験室内感染から始まったあのSARS騒動:バイオ関連事故例12(2016-04/10 New!)

11.バーミンガム天然痘感染死亡事件(1978年9月):バイオ関連事故例11(2016-04/09 New!)

10.またしても米国CDCで事故(2014年12月) 【朝日新聞2014年12月26日】

要旨
① 米国のバイオセイフティを司る米国疾病対策センター(CDC)で、事故が続いている。朝日新聞は『エボラ研究中にウイルス感染か』と題する小さい記事を載せている。
② CDCは24日、研究施設でエボラウイルスの取り扱いが適正に行われず、研究者一人が感染した可能性があることを明らかにした。
③ 施設外への感染拡大の恐れはないという。
④ 事故の内容は、エボラの診断試験をしていた研究者が、別の実験室に届ける荷物に誤ってウイルスを含む資料を置いたこと。レベル2の実験室でこの試料を受け取った別の研究者に感染した恐れがある。
https://www.cdc.gov/about/pdf/lab-safety/investigation-into-dec-22-2014-cdc-ebola-event.pdf


注. 米国の総本山、CDCで軽い事故が相次いでいます。大事に至らなかったのは紙一重の運の差。謙虚に自覚しましょう。

9.バイオセーフティー管理の危うい現状2(2014年6月)

要旨
① 米国疾病対策センター(CDC;項目5の注1参照)で、致死的な病原体の関係する事故が2度にわたって起こった。鳥インフルエンザウイルスと炭疽菌。(鳥インフルエンザは8の欄で紹介。炭疽菌はこの欄で紹介。)
② 不活化が不十分だった可能性のある炭疽菌が、手違いによって、封じ込め実験室であるBSL-3の研究室からそれよりレベルの低いBSL-2の研究室へと送られた。
③それを受け取った研究室には、生きた炭疽菌を扱えるような設備はなかった。

注1. これら2件の事故による健康被害は、記事からではよくわかりませんが、たとえ健康被害がなかったとしても、それは紙一重の運の差でしかないということを自覚しなければなりません。
8.バイオセーフティー管理の危うい現状1(2014年3月)
要旨
① 米国疾病対策センター(CDC;項目5の注1参照)で、致死的な病原体の関係する事故が2度にわたって起こった。鳥インフルエンザウイルスと炭疽菌。(鳥インフルエンザはこの欄で紹介。炭疽菌は9の欄で紹介。)
② たとえ高度に安全な施設があっても、バイオセーフティーを確保しようとする強い「文化」がなければ手違いが起こりやすくなり、研究者や一般市民を危険にさらす可能性があることがはっきり示された。③これまでのバイオセーフティーの内容のほとんどは、物理的な生物学的封じ込めと、安全規則や広く認められた標準的な操作手順の順守に関するものだったが、それでは不十分。研究機関はより強固な安全性の精神を育てることに注力して、安全文化の大変革が必要。
④毒性の低いインフルエンザウイルス試料のつもりで他の研究室へ送った試料が、実は致死的なH5N1型鳥インフルエンザウイルスを誤って混入させてしまっていたものだった。
注1.ぜひ、リンク先の日本語記事をお読みください。安全を確保するには新しい考えや理念が次々に更新されています。これに対し、長崎大学の安全に対する考えは古臭い安全神話のみに支配されたものでしかないのです。なお,英語原文記事は、このサイト、Biosafety controls come under fireにあります。
7.フランスでSARSコロナウィルスを大量紛失(2014年)
要旨
① フランスのあの著名なパストゥール研究所で、極めて致死率の高いSARSコロナウィルスのサンプル試験管2349本が紛失した。
② 最も警戒が厳重なはずの研究所から、どのようにしてウィルスがなくなったのかは、はっきりしないが、2014年1月には紛失に気が付いた。
③この一年半の間に研究所で働いていた職員を、見習いも含めてすべて調べ、その人物像や、なにかトラブルがなかったかまで、事細かに精査したがいまだ流出経路は不明。
④2013年3月にサンプルは従来の冷凍庫から別の冷凍庫に移された。そのときにスタッフの手違いによってウィルスが破壊されたけどこの出来事を記録するのを忘れただけ(注1)なのであればいいけど、という楽観的・希望的推測にすがるしか今のところはない。
注1.このようなヒューマンエラーもあることを覚えておこう。そして、1月に紛失に気が付いたのにこの記事の日付は5月。理由はわからないが、公開されるだけまだマシかもしれない。
6.Texas Biolab Loses Deadly Guanarito Virus(2013年)
(テキサスのガルベストン国立研究所で、致死性のガナリトウイルスを紛失)
要旨
① ガルベストン米国立研究所はテキサス大学医学部支所において,ガナリトウイルス(注1)を一部紛失した(5つの小ビンのうちの一つ)。
② 大学はこれがセキュリティ違反した不適正な操作の結果で生じたとは思わなかったが、CDCに報告した。
③その研究者は、その小ビンは通常の殺菌工程実行中に壊れたと思う、と話した。
④BSL4研究室では、すべての固形廃棄物は液体を蒸発させることなく処分されることになっているが、この小ビンについてそのようになったかどうかはわからない。
注1.ガナリトウイルスはエボラウイルスと同等の、第1種病原体(最高危険度レベル)のウイルス。
5.バイオ研究施設で続く、深刻な事故(2007年)
(米国のバイオ研究施設で、研究者が危険な病原体に晒されるという事故が連続している。)
要旨
① テキサスA&M大学のバイオテロ防衛研究で、不注意による研究者への感染があった。
② テキサスA&M大学はこの事故を隠ぺいしたため、CDC(注1)はこの大学に研究停止を命じた。

注1.CDC:米国保健福祉省所管の総合研究所、疾病管理予防センター。米国でバイオ関連の研究に最高の権限を持つ組織。
4.バイオ研究施設で続く、深刻な事故(2007年)
(CDC自身の研究所でもそれは起こった)
要旨
① CDCが新設したハイセキュリティーの施設「Building 18」に関して、2007年6月に起きた落雷(注1)による電源障害で、研究者が危険な病原体に晒された可能性がある。
②BSL4の区画はまだ稼働していなかったが、もし稼働していれば、実験室の気圧を低く保つことができなかっただろう(注2)。
③研究施設をどう建設するべきか、研究をどう実施するべきかという問題は、きちんと法律で規定されておらず、ガイドラインがあるのみだ。Ebright氏は、早急に修正する必要があると話している。
注1.『Atlanta Journal-Constitution』(リンク切れ)紙の記事によると、落雷で回路遮断器に過大な電流が流れて引き起こされる停電の重大性を、CDCの関係者は軽視していた、とある。これも事故が生じた後で初めて人間が気が付く(落雷事故への備えが不十分であった)という、典型的なヒューマンエラーの一形態である。
注2. 実験キャビネットが機能しなかった=キャビネット内のウイルスが漏れ出た、という可能性を意味する。
3.米国のボストン大学での実験室感染事故(2004年)
(New York Times January 24, 2005による)
要旨
① ボストン大学の3人の研究者が実験中に野兎病に感染した。
②引用記事中の(3)感染事故の波紋と結末 をぜひご覧ください。(注2)

注1. この事故はBSL2施設で生じたもの。しかし、BSL2やBSL3で生じるヒューマンエラーがBSL4施設では生じないということがあろうか。
注2.以下に重要な個所を引用する。
『今年の1月にボストン大学医療センターの建設予定地の周辺住民10人が実験施設建設計画の差し止め提訴に踏み切ったが、その担当弁護士は、大学の環境影響報告書が「医療センターではこれまで実験室感染事故はなかった」と述べている。つまり大学当局は事故隠しをしたことが判明したのである。また医療センター建設に反対しているある団体の代表は、「5ヶ月間に3人の感染者が出ている。しかも彼らがこの危険な実験施設がいかに安全なものであるかと言っている最中にこうした感染事故が起きているのである」と述べている。』
2.旧ソ連における炭疽菌流出事故(注1)(1979年)
(サイエンス、1994年第266巻1202-1208ページによる)
要旨
① 空気排出口へのフィルターつけ忘れにより生じた。
② 死者は66名、施設から4km(注2)離れたところでも死者が出た。
③ 家畜は50km(注2)離れた地区でも感染した。
注1. 炭疽菌はBSL3施設で研究可能だが、他の病原体の研究も行われていたようであり、この施設はBSL4施設であった可能性は大きい。
注2. 安全工学では安全・安心を担保するために「安全ファクター」と「安心距離」の概念を取り入れている。
1.湘南研究所における漏水事故の原因と再発防止策について(2011年)
要旨
① 遺伝子組換え生物実験室から廃液が漏れた。
② 実験滅菌排水原水タンクにつながる実験室内の水道栓を閉め忘れにが原因。
③ 環境への遺伝子組換え生物等の拡散の可能性はないと説明している。

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by nakamatachi3 | 2015-01-19 17:28 | ・根拠資料集 | Comments(0)


2.化血研の不祥事型のヒューマンエラー 2015-12/10 更新!

つぶやき集の7でつぶやいた化血研の不祥事は,また別の重大な示唆を与えます。ここに再度,第三者委員会報告書の優れた指摘を書いておきます。

◎本委員会が本件不整合や隠ぺいの調査を通じて問題の根幹として感じたのは、化血研における「研究者のおごり」「違法行為による呪縛」である。
◎自分たちは血漿分画製剤の専門家であり、当局よりも血漿分画製剤のことを良く知っている。」、「製造方法を改善しているのだから、当局を少々ごまかしても、大きな問題はない。」という「研究者としてのおごり」が本件不整合や隠ぺいの原因となった。
一度開始された不整合や隠ぺい工作を当局に知られることなく中止することは極めて困難であり、化血研の役職員は、先人達が始めた不整合や隠ぺいを当局に報告する勇気もなく、それらを改善する方策も見つからず、先人達の違法行為に呪縛されて、自らも違法行為を行うという悪循環に陥っていた。
◎違法行為が発覚することによる化血研の経営への影響や先人達との人間関係を考えれば、当局に違法行為を報告することを躊躇する心情が生ずることは想像に難くない。


事故は起こそうと思って起きるものではないのですが,そこで誤解しやすいのが人為的ミスはうっかり系,どんなに気を付けていても気が緩む瞬間があるために起きるのだ,と思い込むことです。これが,マニュアルでうっかり系の間違いをしないように対策を立てれば事故は防げるという,安全神話の一つにつながっていくのです。

もちろん,その系統の人為的ミスも多いのは確かなのですが,それだけではないことをしっかりと認識しておく必要があります。特に最近の重大事故はそちらの方が多いはずですが,それはプレッシャによる確信的な逸脱行為というものです。最近まさかと驚かされたことですが,マンション基礎打ちのデータ改ざん事件などはまさにそれが原因です。

これはうっかり系とは明らかに異なります。やってはいけないこととわかっていて,しかし個人の責任を取りあえず回避するためにやむを得ず犯してしまうミス,つまり逸脱行為というものを必ず想定しなくてはならないのです。

この種の逸脱行為およびそれをやって逃げざるを得ないプレッシャから来る責任逃れ利益欲,もしくは名誉欲が個人や組織にある限り,原理的に防ぐことはできません。ではどうすれば良いのか,ですが,だから万一のことが生じることを想定して,それが取り返しのつかないことを生じる恐れがあることは初めからやめるべきなのです。それしか対策は無いのです。

BSL4施設は万一のことが生じた時には取り返しのつかないことになります。せめて住宅密集地でない場所に設置するというのは,最小限の知恵であり,道徳であり,謙虚さです。

1.ヒューマンエラーの基礎 
2015-01/19

 近年,機器の信頼性が向上し,機械はそれほど頻繁に想定外の故障を起こすということはなくなりました。反面,システムが複雑化することにより,人間そのものに起因する事故が相対的に増えているようです。
 インターネットで 「ヒューマンエラー」 を検索すると多くの記事を見ることができます。その中から二つ紹介しておきます。

  1.ヒューマンエラー学
  2.ヒューマンエラーとリスクアセスメント



 1の記事では,冒頭部分に次のように書かれています。

『現代の大事故は、ほとんどヒューマンエラーによる事故です。いろいろな統計報告がありますが、事故のおおよそ6~8割はヒューマンエラーが原因であるというのが相場になっています。』

 また2の記事では13ページを見ると,システムによって違いはあるものの,

『事故(またはシステム障害)がヒューマンエラーに関わる割合は,世界で8割

という趣旨のことが書いてあります。

果たしてバイオ研究に関してはどの程度でしょうか?おそらくこの割合はもっと高いものと思われます。なぜなら,研究システム全体において人間の作業に依存する割合が他よりも高いからです。

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by nakamatachi3 | 2015-01-19 16:17 | ・根拠資料集 | Comments(0)



日付の新しいものが上に来るように配列しています。

 11.実験室内感染から始まったあのSARS騒動:バイオ関連事故例12 2016-04/10 New!
   あの記憶に新しいSARSは実験室内感染でした。その原因も人間そのものに由来します。それを承けてWHOは2006年に新マニュアルを出しましたが,このような繰返しは常におこることです。坂本キャンパスがその繰り返しの実験台にされてしまいます。

 10.バーミンガム天然痘感染死亡事件(1978年9月):バイオ関連事故例11 2016-04/09 New!
   バーミンガム大学で起きた天然痘感染死亡事件は,バイオ施設からの排気が本質的に危険を孕むことを教えてくれます。

 9.国の基本計画(案)を巡る動き 2016-03/07 更新
   2016年2月9日に国がまとめた『感染症対策の強化に関する基本計画案』について,しっかりと理解するために必要なことをまとめました。最新記事は片峰学長の記者会見の吟味です。

 8.長崎大学の大きなウソー確定診断についてー 2015-08/19
   長崎大学は大きなウソをついています。信用できる相手かどうかしっかり見極めましょう。

 7.長崎大学による主張の吟味2:競争意識に囚われ過ぎた発想 2015-05/28
   長崎大学は研究者間,大学間,国家間の競争意識に囚われ過ぎていると思われます。世界貢献はもっとほかのやり方でやって欲しい。

 6.長崎大学による主張の吟味1:安全神話 2015-05/03
   長崎大学による安全性の主張は結局は安全神話にほかならず,この神話を信じるか信じないかの問題に帰着するほかはありません。

 5.立地条件に関するWHO勧告を巡る議論 2015-03/19
   BSL4施設の立地条件は,施設からの排気を循環使用しないこととセットになっており,WHOの指針に明記してあります。長崎大学はそれを認めませんが,皆様ご自身で検証してください。

 4.BSL4施設の必要性の意味 2016-02/29 一部改訂
   エボラ研究やそのためのBSL4施設は必要と言われていますが,その意味を科学技術的観点からだけではなく,社会文化的および国際政治的な観点から考察しました。

 3.設置反対は地域エゴ・住民エゴではありません 2015-02/05
   地域住民の皆さまへ。設置反対はエゴではありません。正当な要求です!

 2.大学の主張に対する批判の項目別まとめ 2015/01/25
   大学は個別にみると非常に問題のある説明を繰り返しています。それらの一つ一つに具体的な批判を加えました。

 1.長崎大学が進めるBSL4施設設置計画の白紙撤回を求める声明 2015/01/25
   白紙撤回を求める会としての出発にあたり発表した声明です。国による安全審査体制が確立されない段階では,計画は時期尚早であると発信しました。

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========記事ここまで========

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by nakamatachi3 | 2015-01-15 19:42 | ・主張・理念 | Comments(0)


このブロックでは,主に長崎大学が主張する理屈について吟味・批判します。
(新しい記事が上に来るように配列しています。)

 7.BSL4施設構想の真の動機を推測する2016-04/22
  長崎大学のBSL4施設設置構想の真の動機は何だったのでしょうか。それを資料に基づき推測します。

 6.BSL4施設がなければ治療や退院もできないのか? 2016-02/02
  長崎大学は感染症法をどのように紹介しているのかを見ていきます。これまでの誠実度を検証しましょう。

 5.長崎大学の大きなウソー確定診断についてー 2015-08/19
   長崎大学は大きなウソをついています。信用できる相手かどうか見極めましょう。

 4.長崎大学による主張の吟味2:競争意識に囚われ過ぎた発想 2015-05/28
   長崎大学は研究者間,大学間,国家間の競争意識に囚われ過ぎていると思われます。世界貢献はもっとほかのやり方でやって欲しい。

 3.長崎大学による主張の吟味1:安全神話 2015-05/03
   長崎大学による安全性の主張は結局は安全神話にほかならず,この神話を信じるか信じないかの問題に帰着するほかはありません。

 2.立地条件に関するWHO勧告を巡る議論 2015-03/19
   BSL4施設の立地条件は,施設からの排気を循環使用しないこととセットになっており,WHOの指針に明記してあります。長崎大学はそれを認めませんが,皆様ご自身で検証してください。

 1.大学の主張に対する批判の項目別まとめ 2015/01/25
   大学は個別にみると非常に問題のある説明を繰り返しています。それらの一つ一つに具体的な批判を加えました。

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by nakamatachi3 | 2015-01-15 19:28 | ・主張・理念 | Comments(0)