1.BSL4設置構想の動機とは?

 長崎大学が,というより責任の在り処を明確にする意味で片峰学長のお名前を特定しておきますが,BSL4施設を住宅密集地に建設しようなどと言う無謀な構想を抱かれた真の動機というものを見極めておかねばなりません。それによって,大学とか研究とか科学とか学問とかいうものの実態が,一般の人が抱くイメージ(多くは性善説)とはかけ離れた場合があることを知ることができます。

 大学のHPなどにおける公式メッセージからでは隠された真の動機は計り知ることはできません。なぜならば,そこに書かれたものは動機というよりも,その構想が持つ社会的な意味づけ,もしくは目的を公表したに過ぎない場合があるからです。

 その本音が露わになるのは内輪での資料です。本記事では入手できた2つの資料を基に,それを分析することによって,隠された真の動機を推察します。

 2.第12回科学コミュニケーション研究会において露呈したホンネ

 科学コミュニケーション研究会というものがあります。まだ学会としての体裁が整えられてはいない段階のようですが,
『科学コミュニケーションに関する研究を通じて、日本における科学コミュニケーションの発展に寄与することを目的として・・・』
と書かれています。

 本記事ではこれについては深入りしません。(私個人としては,もし『科学の専門家⇒科学をあまり知らない市民』という図式の伝道方法の研究が目的なのであれば,リスクコミュニケーションという分野も含め,市民には有害だと思っています。なぜなら,伝える方は専門家として科学的意義を熟知していると自負しているため,コミュニケーションとは科学的意義を知らない市民側に考えを変えるよう説得することを意味しているからです。
 そこからのほぼ必然的な帰結として,コミュニケーションとは名ばかりの,自分たちは考え方を変える必要を認めないパターナリズムに陥ってしまうのです。)

 この記事で採り上げるのは,この研究会の年次大会の記録です。下記にリンクがあります。

 科学全般第12回科学コミュニケーション研究会 年次大会のご案内

 この年次大会の中で,BSL4施設推進の実質的責任者である学長特別補佐の調(しらべ)さんが招待講演を行っておられます。タイトルは,

 「長崎大学のBSL4設置、この5年間の経緯と最近の展開-住民の合意とは何か-」

です。ご講演の詳細はわかりませんが,「概要」で,背景と経緯が書かれており,それによって中身を推測することができます。

 その一番目に次のようにあります。

 1)国立大学は第3期中期計画を目前して強味の強化、弱みの縮小や改革を迫られており、本学は熱帯医学、感染症と放射線災害、放射線後障害に強味

 ここで,BSL4設置構想の動機,目的に関する項目が,これだけしかないことに注目したいと思います(ご確認ください)。ここに,BSL4設置の動機・目的が正直に記されています。すなわち,次のような理屈のつながりになっています。

 (1) 国立大学は強みの強化、弱みの縮小や改革を迫られている⇒
 (2) 本学は熱帯医学、感染症と放射線災害、放射線後障害に強味がある⇒
 (3) それを活かすことが大学の発展につながる⇒
 (4) BSL4設置が大学強化の目玉になる

 (3)と(4)は理屈の流れを補ったものですが,この部分に長崎大学のホンネが顕われています。この研究会は,招待講演を企画してくれるほどの長崎大学の構想に好意的な会議です。従って,どちらかというと内輪の話という気安さがあったのでしょう。調さんにとっては取ってつけたような社会的な意義よりも,ついホンネの動機を語ってしまったということです。

 言い換えると,調さんは次のように書かなかったこと(発想が無かったこと)が露わになったのです。

 「エボラのような感染症克服が国家の願い,世界の願い,市民の安心,それらを実現するためにBSL4施設を設置したい。しかし,住民にはその必要性と大学の高邁な理想(大志)がなかなかわかってもらえない」

 このような姿勢で伝道方法を研究するというのならわかりますが,明らかにそうではなかったのです。せめて学長が仰る,「国家の危機管理上,由々しき問題」ぐらいの発想はなかったのでしょうか。(もしこのような大志を実現したいのなら,住民との安全距離を確保した場所探しから再出発ですよ。片峰学長はそうなればまたゼロからのやり直しになるからいやだと仰いましたが,大志の実現には遅すぎるという事はありません!ただし,適地がそう簡単に見つかるとは限りませんが・・・)

 このことによって,長崎大学のBSL4施設設置構想は決して長崎市民や国民のためだったのではなく,長崎大学発展の目玉にするためであったと推測できるのです。
 この推測はもう一つの資料からも補強できます。それを次に示します。

 その前に誤解を解いておかねばなりません。この背景と経緯の続く4番目に,

 4)平成27年5月近隣3自治会が反対表明(後に1自治会は脱落)

 があります。この脱落(自治会)とは,ある自治会が他の反対自治会のようには,特別の反対行動をしなかったこと(反対表明だけ)を指しているのですが,これは初めからの予定の行動であり,未だに反対自治会の数の中に入っています。そして,反対自治会の数にカウントしていることに対して私たちが抗議を受けたことも全くありません。従って,「脱落」という表現は正しくありません。(住民の意見調査結果と住民への呼びかけ参照。)

 3.長崎大学の中期目標

 上述の推測は,また別の資料で補強できます。その資料とは

 長崎大学中期目標

です。5/19ページの【7】から研究に関する記述が始まりますが,とにかく,日本をリードする,世界をリードする,世界トップレベル,などの『世界』のオンパレードです。
 そしてそこには論文数やランキングを向上させるための数値目標が並び,研究者たちを競争へと駆り立てています。

 特に【8】の感染症に関する記述を見てみましょう。

 中期目標:【8】「世界をリードする感染症研究拠点の形成」を図ることにより世界トップレベルの教育研究拠点を構築する。

 中期計画:【8-1】国,国内研究機関及び地域との緊密な連携を通して,「高度安全実験(BSL-4)施設(仮称)」を中核とした感染症研究拠点の形成に向けた検討を行うとともに,新興感染症等の学術研究や,感染症制圧に貢献できる人材育成を担う世界トップレベルの教育研究拠点機能の充実を図る。

 以上のようにしか書かれていないのです。つまり,片峰学長の仰る,『国家の危機管理上,由々しき問題だから』,『感染症研究が世界に後れをとり,由々しき問題だから』,のような理由はどこにも見当たりません。また,『長崎市民をエボラの感染症から守るために』などの理由もどこにも見当たりません。ただ,世界をリードする感染症研究拠点を目指すこと,しかないのです。そしてそれは,中期目標全体を貫く目標,『大学の発展のため』なのです。

 念のために書いておきます。長崎市民にとって,長崎大学が発展することは大いに歓迎することです。何より,子弟の憧れの大学になって欲しいと,市民ならだれでも願うことです。またそのためには公正ながらも激しい競争にも勝ち抜かねばならないことも市民はよく知っています。
 しかし,それもこれも市民の安全を犠牲にしたものであっては本末転倒です。長崎大学がそのような考えに囚われてしまっては,甘ったれ,ゴーマンすぎるというほかは無く,本当に由々しき問題です。

 4.結論

 以上見てきたように,長崎大学のBSL4施設設置構想の真の動機は,長崎大学の発展のためであった(膨大な予算と他大学にない特殊な研究設備が得られる)という推測が可能です。(ただし,これを覆す資料があって,それを示して戴けるならば,この記事の趣旨は撤回し,深くお詫びいたします。)

 大学はすさまじい大学間の競争を生き延びて行かなければならない境遇に放り込まれています。従って,純粋な真実追求という側面ばかりではなく,いかに他大学よりも多く予算を獲得するか,いかに他大学にない研究設備を獲得するが,血眼になっているのです。
 片峰学長はそのような中で,素晴らしい指導力を発揮して長崎大学を世界レベルの大学にしようと必死に頑張っておられるわけです。ですから,市民としてはできる限りの支援をしたいと思います。しかしながら,問題は必死に頑張るその中身です。それが市民の安全を犠牲にしなければならないようなものであれば,市民にとってははなはだ迷惑なことと言わざるを得ません。一発逆転のようなものを狙わないで,ぜひ市民全員の支援を受けられるようなことで世界レベルを目指して頑張って戴きたいのです。例えば,結核撲滅プロジェクト,などいかがですか?

 もちろん,この記事の結論は推測でしかありませんが,なんてったって安全を脅かされる市民にとっては寝耳に水の迷惑な話でしかないのですから,動機自体の正当性は本質的に重要なものです。長崎大学はこの点に関して明確な釈明を行う必要があります。
 さもなくばせめて住宅密集地である坂本キャンパスへの設置をあきらめ,安全な距離を確保できる適地への計画変更を切にお願いする次第です。


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by nakamatachi3 | 2016-04-22 23:56 | ・長崎大学の主張への批判 | Comments(0)

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