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 3番目のプロジェクトに存在する不思議な目的

 国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画(案)の概要の5ページ目に描かれている3番目のプロジェクト『感染症危機管理体制強化プロジェクト』の中で,大きな目的の一つは次のような体制を整えるということです。

背景:感染研でBSL4施設が稼働したが,検査のために感染研に送る体制では検体の搬送が長距離・長時間となるケースが生じる
    ⇊
目的:感染研の全面的支援によって,全国の公的検査機関を中核的検査機関として整備し,そこでもエボラの検査を実施できるような体制を作る

 これはいいことだ!と何気なく見過ごしそうになりますが,そして良いことには間違いないのですが,でもこれってなんだかキツネにつままれた感じがしませんか?

 というのは,これまで国は(もちろん長崎大学も)次のように言って来たからです。

 『BSL4施設が稼働しないとエボラの検査ができない』

 だから,この圧力に負けて,武蔵村山市長はBSL4施設の稼働に同意したのではありませんか?今回の目的は決して検査のためだからとして全国にBSL4施設を造ろうというものではありません。従って,全国の中核的機関でエボラの検査ができるようにしたいということは,即,BSL4施設でなくてもエボラの検査ができるということに他ならないのです。
 念のために書いておきますが,いくら感染研だってBSL4施設そのものを全国各地に”持参”するわけにはいきません。その検査ノウハウに関する指導,さらには知的所有権(使用権?)等の開放などを意味するものと思われますし,それによって地方の中核的公的機関が持つBSL3なりの施設で検査しようというのです。

 実は,去年のエボラの感染疑いの人が現れた際に(まだBSL4施設が稼働してない時です),どうして地方で検査する体制を作らないのだろう?と思ったものでした。今回ようやくその方向に進みそうなわけで,大変喜ばしいのですが,逆になぜ今頃?と思うのです。
 もはやBSL4施設が稼働し,『BSL4施設が稼働しないとエボラの検査ができない』と訴える必要が無くなったからではないのか?と推測するのはひどいでしょうか?

 ただし,当ブログでは『BSL4施設が稼働しないとエボラの検査ができない』ということは信用できないとすでに記事に書いてきました(長崎大学の大きなウソー確定診断についてー)。
 今回のことは当ブログの主張が図らずも証明されたということになるのでは?と思います。

 『全国的な検体検査の体制強化』の目的の背景

 上のような目的であることをポンチ絵の資料から確認しておきます。

 国際的に脅威となる感染症対策の強化に関する基本計画(案)の概要の5ページ目に描かれている3番目のプロジェクト『感染症危機管理体制強化プロジェクト』の中で,一番目の課題である『国内の検査機能強化』に注目します。
 この課題は2つの目的に分かれていて,一つ目はBSL4施設を有する感染研の検査機能強化ですが,二つ目の公的検査機関による全国的な検体検査の体制強化の目的が上で論じた,これまでとつじつまの合わない内容です。

 この目的の必要性については,5ページの左端中央に『背景』として書かれています。曰く,

① 国立感染症研究所(村山庁舎)のBSL4施設が昨年8月から稼働できることとなったが、エボラ出血熱等の検査機関は同研究所のみ。
② 同研究所への検体の搬送が長距離・長時間となるケースが生じることが想定される。

つまり,『エボラ出血熱等の検査機関は感染研のみ』⇒『検体の搬送が長距離・長時間となるケースが生じる』⇒『これは何とかしないといけない』

というのが背景にあり,『これは何とかしないといけない』というのがこのプロジェクトの発端であると思われます。この対策として,『国立感染症研究所の機能強化』と『公的検査機関の全国的な検体検査の体制強化』を図ることになったというわけです。

 全国の公的検査機関では何をやるのか?

 5/8ページのポンチ絵の説明には続けて次のように書かれています。

 ① 『標準作業手順書の作成・周知、研修の実施』 ⇒ 『地域ブロックごとにネットワークを構築』 ⇒ 『段階的に公的検査機関の体制強化』

 ② そして,目指すべき全国的な体制として,感染研から中核となる公的検査機関に支援を与える矢印が太太と描かれています。

 ①と②のことを併せると,上で論じたようなことが言えるのです。

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by nakamatachi3 | 2016-02-20 11:53 | ・主張・理念 | Comments(0)

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